犬や猫に次いで、ペットとしての人気が高いハムスター。
ハムスターを育てている、またはハムスターを迎えることを検討している方にとって、ごはんのあげ方は気になるポイントではないでしょうか?
ここではハムスターの食性や消化のしくみから、適切なごはんの頻度や量、あげ方についてご説明します。
ハムスターの食性と消化
ハムスターはヨーロッパからアジアにかけた乾燥地帯・半乾燥地帯の砂漠に生息しています。
食性は草食に近い雑食性で、主に植物の種や実、茎、葉などを食べるほか、昆虫を食すこともあります。
ハムスターの胃は前胃と後胃の2つに分かれており、前胃では微生物による消化(発酵)、後胃では消化酵素による消化(化学的消化)が行われています。
また他の草食動物と同じように、盲腸が発達しているという特徴があります。
本来、動物は植物の繊維(食物繊維)を消化できる酵素を持っていないため、盲腸に微生物を住まわせ、繊維を分解してもらうのです。
そしてハムスターには自分のフン(盲腸便)を食べる食糞の習性があり、このフンにはビタミンB群やタンパク質が豊富に含まれています。
タンパク質は体づくりの材料やエネルギー源として働き、ビタミンB群は赤血球の合成や体の代謝を助けてくれる重要な栄養素です。このフンもハムスターの栄養源の1つとなっています。
必要なごはんと水の量
ハムスターが1日に必要とするごはんの量は体重の10~12%ほど(体重100g当たり10~12g)、飲水量は体重の8~10%ほど(体重100g当たり8~10ml)とされています。
そのため品種や個体によって異なり、それぞれに合った量を与える必要があります。
歯を削る目的でもエサを齧ることがあるので、与えるときは少し多めにした方が良いでしょう。
またハムスターは元々乾燥地帯に生息するため、水を全く飲まない子(特にドワーフハムスター)が見られることがあります。
野菜や果物からも水分は摂取できますが、特に主食がペレットの場合は必ず水を与えてください。
ごはんの種類
ペレット
最近はハムスターの種ごとに専用のペレットが市販されています。
ハムスターに必要な栄養素がバランスよく配合されていますので、ペレットを主食として種子や野菜を与えておきましょう。
ただし個体によって好き嫌いが見られる場合がありますので、いろんなペレットを試すと良いかもしれません。
タンパク質が16%(できれば20%)以上、脂肪が3~5%、粗繊維が4~5%前後のものが理想とされており、粗繊維を多めにすると下痢の予防になります。
また老齢になると代謝が落ちますので、できればタンパク質を減らして粗繊維を増やし、カロリーを抑えるようにしてください。
植物の種子
ハムスターは植物の種子も好んで食べます。
ハムスターの好物としてヒマワリの種が有名ですが、カロリーが高い種子のため、あげすぎにはくれぐれも注意してください。
できればヒエやアワ、キビなどのカロリーが低い種子を与えると良いでしょう。
ミックスフード
ミックスフードは、ペレットやヒマワリの種などが混ざったものです。
栄養バランスの良いペレットとハムスターが好む種子が混ざっているため、ごはんとして優れていると思われがちですが、好きなものだけを寄り好んで食べてしまうことがあります。
その結果栄養が偏りがちになり、肥満などの原因になってしまいます。
ミックスフードを与える場合は、ペレットと種子類を分けて与えるなどして工夫すると良いでしょう。
タンパク質
ゆで卵の白身や煮干し、チーズ、小動物用ミルク、ヨーグルト、昆虫(ミルワームなど)などの動物性タンパク質をあげると良いです。
ただしハムスターは草食性に近い動物ですので、主食はあくまでペレットとし、あげすぎないように注意しましょう。
また齧歯類は老齢に伴う腎不全が起こりやすいため、与える際は塩分の低いものを選び、老齢の子は動物性タンパク質から植物性タンパク質(大豆など)に変えてあげましょう。
野菜
下痢の原因になる可能性がありますので、水分の少ない緑黄色野菜を中心に与えてください。
葉物野菜は食べても問題ありませんが、咀嚼が少なくても食べることができ、不正咬合の原因になりやすいため、たくさんあげるのは避けましょう。
またジャガイモの芽や皮、生のマメ、ダイオウ、ネギ類、ニラなどは絶対に与えないでください。
ジャガイモの芽に含まれるソラニンやチャコニンが嘔吐などを引き起こし、ネギ類やニラに含まれるアリルプロピルジスルファイドが赤血球を傷つけて溶血性貧血などを引き起こします。
ニンジンやブロッコリー、カリフラワー、サツマイモなどの固いもの、パセリやセロリ、チンゲンサイ、コマツナなどの水分が比較的少ないものをあげましょう。
果物
一部の果物はあげても大丈夫ですが、水分や糖分を多く含み、本来ハムスターが食べるものではありませんので少量にしましょう。
イチゴやメロン、スイカ、みかん、バナナ、キウイなどはあげても大丈夫です。
またハムスターや小動物専用のドライフルーツも与えると良いでしょう。
柿やビワ、サクランボ、モモ、ブドウなどは中毒などを起こすことがありますので、あげないようにしましょう。
ごはんのあげ方
ごはんのあげ方には毎日与える方法と、入れっぱなしにしておく方法があります。
入れっぱなしにしておくと体内時計のリズムが崩れ、食事の回数が増えて肥満のリスクが高まりますので、できれば毎日与える方が良いです。
毎日与える場合は夜行性のハムスターに合わせて時間を決め、活動前の夕方か、夜間の早い時間にごはんをあげるようにしましょう。
長期の外泊などで入れっぱなしにする場合は、腐りにくいペレットや種子などを多めに入れておき、長くても3日以上は放置しないようにしておきましょう。
それ以上長引きそうな場合は、知人やペットホテルなどに預けましょう。
注意点
ハムスターの歯は人間のように生え変わったりせずに一生伸び続けるため、食事だけでなく歯を削る目的でもエサを齧ることがあります。
そのために固くて大きめのペレットが販売されていることがありますが、大きなペレットを頬袋に入れ、自力で取り出せなくなってしまうことがあります。
ごはんはハムスターの体長に合った大きさのものを与え、ケージの中には齧り木などを置いておくと良いでしょう。
まとめ
ハムスターの1日当たりのごはんの量は体重(g)当たり10%ほどとし、専用のペレットを中心として野菜や種子などを与えましょう。
ごはんは入れっぱなしにすると生活リズムが崩れて肥満などの原因になるため、夜行性のハムスターに合わせて毎日決まった時間(夕方~夜の早い時間)に与える方が良いです。
入れっぱなしにする場合は腐りにくいペレットなどを入れておき、3日以上放置しないようにしてください。
またハムスターは歯が生え変わらず伸び続けるため、歯を削る目的でもごはんを齧ることを覚えておきましょう。
与えるごはんやおやつは栄養バランスを考え、ハムスターが食べても大丈夫なものかどうか確認するようにしてください。
≪参考≫
社団法人日本獣医師会「学校飼育動物の診療ハンドブック」
http://nichiju.lin.gr.jp/school/siiku.html
霍野晋吉「エキゾチックアニマルの栄養学-3.ハムスター-」ペット栄養学会誌,18(2):113-116,2015
坂田隆「ほ乳動物の食性と消化管の構造・機能」日本味と匂学会誌,Vol.6,No.2,p191-201,1999
大島誠之助、佐向敏紀「禁忌食(その1)―タマネギなどのネギ属とイヌ・ネコの健康」ペット栄養学会誌,14(2):103-104,2011